ラブ×コントロール
距離
そして、準決勝を数日に迎えたある日。
教室の窓際から、私はカイの姿を見る。
「おーいカイ!攻略本手に入れたぞー」
「おっ!マジかよ、見せろやっ」
はっ!? 攻略本?
カイは友達と楽しそうに話していた。
「ゲームの話だよ」
「えっ?あ~一平くん、ゲーム…ねぇ~」
私は呆れた顔をしながら、カイを指差した。
「アレ…やっぱり本当に同一人物?」
「ははっ!何度見ても同一人物だよ」
「…だよね」
「咲原、こないだの試合の日どうしたんだよ?」
「あっ…うん、水内くんと会ってた」
すると一平くんは“何で”とは聞かずに、そのまま話し続けた。
「そっか…どおりで、ちゃんと言ったんだな?」
「…何で分かるの?」
「咲原の顔見れば分かるよ、何か少しスッキリしてる」
「そうかな…」
水内くんは、今朝も変わらない笑顔で“おはよう”って言ってくれた。
私も少し笑って“おはよう”って返した。
きっとこれで良かったんだ…。