テストプレイ
リヒトはほんの少し私を見たものの、特に気に留めず、会話を進める。


「…思い出作りって言われても、どういう所に行けばいいの?」

「うーん…楽しいレジャー施設とかかなぁ。
リヒトは行ってみたいところとかある?」

「…ちょっと待って。今、“楽しいレジャー施設”で検索してる。
……すいぞくかん?こんな魚を見るだけのことが人間は好きなの?」


ぼそり、と呟いたその言葉を私は聞き逃さなかった。
水族館の楽しさをリヒトは理解ができないのか、心底不思議そうな顔をしている。

魚を見るだけ、かぁ…
その言葉になんだか悲しい気持ちになる。
つい、私は言い返していた。


「魚を見るだけ…そう言っても、水族館には珍しい魚だったり、見るだけじゃなくて触ることの出来る水族館もあるんだよ。」

「…なら、水族館に行って確かめてみよう。
魚を見ることが楽しいのか。僕にも多少の喜怒哀楽はデータとして入ってるみたいだし。」


じゃあ、水族館楽しみにしてる。と言い残すと、リヒトは踵を返して研究室へと戻っていった。

あ、日付決めるの忘れた…そう思っても時すでに遅し。
リヒトの姿は見えない。

お父さんといい、リヒトといい、人に意見も聞かずに勝手に決めちゃうんだから。
リヒトはまだそういう感情がわからないとしても、なんか傷つくな…
私の意見なんか聞かなくてもいいって言われてるみたい。

…なんて、考えても仕方ないのかな…

…よし!こうなったら、少しでも水族館の魅力を伝えてリヒトを楽しませよう!


無理矢理気持ちを切り替えて、水族館のプランを考えることに没頭したのだった。
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