テストプレイ
お父さんはリビングに着くなり、ソファーにどっかりと座る。その横には一号くん。私はテーブルを挟んでお父さんの正面に座った。
私が座るのを確認すると、お父さんはどこからか紙切れを一枚取り出し、私に手渡した。

「これが一号くんの取説だ。」

「えっ。取説ってこれだけ?」


ロボットとかそういうのって物凄く分厚い説明書があるものだと思ってたんだけど…
お父さんから渡されたのはA4サイズの紙一枚だけ。
ご丁寧に『天才博士の大発明 人型アンドロイド一号くんの取扱説明書』と見出しまでつけられている。


「…ねえお父さん。やっぱり一号くんは無いよ。
他の名前、付けてあげよう?可哀想だよ。」

「…可哀想?可哀想とは、“同情の気持ちが起こるさま。ふびんに思えるさま。”という意味だけど、なんで君が僕を可哀想だと思うの?」

「え!?えーと、ほら、名前ってその人の大切な物だし、今時一号なんて名前はちょっと、なんていうのかな…
あんまり見ない名前だから。」


一号くんの思いがけない質問に戸惑う。
テストプレイって、こういう事が続くのかな…
そう思うと頭が痛くなってきた。


「じゃあ、君が名前をつけてくれるの?」


想像のさらに斜め上をいく質問。


「そうだそうだ!そんなに父さんのネーミングセンスに文句があるならもっといい名前をつけてやってくれ!」


お父さん…ちゃんと考えた上でこれだったんだ…
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