よくばりな恋 〜sweet sweet Valentine〜
振り向かなくても分かる、愛しい背中。
海斗さんと成海先生だ。
挨拶のため声をかけようとしてふと聞こえてきた2人の会話が気になった。
「朝から海斗もチョコレート攻勢すごいんやない?」
「もってことは健太郎もか」
「まあね、義理だって言われたら受け取らないわけにはいかへんし。持って帰ったら紗英が喜んで食べるしさ」
「アイツ、逞しいな」
「海斗は大変やろ、あんまりチョコレート好きやないから」
「毎年毎年山ほど食わされてみろ、いい加減イヤになる」
「モテる男は大変やね〜」
頭の中が真っ白になる。
チョコが好きじゃない・・・・・?
気配に気がついたのか、2人が振り返った。
「翠」
「おはようございます、斯波先生、成海先生」
「おはよう、翠ちゃん」
「病棟に行くのか?」
大きな掌が頭をくしゃりと撫でる。
子供にするような行為が泣きたくなるくらい嬉しい。
「ぼく、先に行ってるわ」
海斗さんが成海先生に手をあげて軽く挨拶をした。
「ごめんなさい、お話の邪魔してしまって」