よくばりな恋 〜sweet sweet Valentine〜
bitterもしくはsweet
「お疲れ様でした」
なんだか生暖かい目をして見送ってくれる長瀬さんと野口さんに挨拶をして部屋を後にする。腕時計を見ると5時半少し過ぎ。更衣室でゆっくり着替えても間に合うだろう。
職員用出入口のところでちはやさんにばったり会う。
「翠ちゃん、そんなに急いで海斗くんと待ち合わせ?」
「お疲れ様です。そうなんです、駐車場で待ち合わせなので」
「ええわね〜、いちゃいちゃバレンタイン。院長が美味しそうに翠ちゃん手作りのガトーショコラ食べてたわよ」
「良かった。院長先生は甘いものがお好きだから・・・・・」
「ん?なんか含みのある言い方やね」
「ちはやさぁん・・・・・!」
泣きついたわたしにちはやさんがギョッとした顔をして、他の人の邪魔にならないように扉の外へ促された。
外に出ると京都の底冷えのする寒さに思わず首を竦めながら、ちはやさんに偶然聞いてしまった海斗さんと成海先生の話をする。
「なんだ、そんなこと。簡単よ」