不思議な眼鏡くん
ショーがスタートした。

大音量の音楽。明るいスポットライト。

モデルたちが歩くと、カメラマンがフラッシュをたく。響のウォーキングは、短時間で練習したとは思えないほど、完璧だった。

女性モデルと手をつなぎ、腕を組み、楽しげにあるく。若者向けのカジュアルジャケットを羽織って、ロールアップのパンツを履いていた。

笑ってる。

「プロみたい……」
咲はやはり戸口のところで、別世界のようなショーを眺めた。

いつのまにか隣にちづが来ていた。舞台から目が離せない様子だ。

ショーの最後、デザイナーがランウェイを歩くと、モデルたちが一斉に拍手を送る。客席からも大きな拍手が起こった。

パアンと大きな音がして、銀色のテープが舞台に放たれる。ライトを反射してキラキラ光るテープをまとって、モデルたちは輝いて見えた。

響に視線が吸い寄せられる。

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