不思議な眼鏡くん
四
夜八時。ショーが終わったあと、会社へ戻ってきた。
みんなクタクタだったけれど、どこか高揚感が残っている。
「社内広報が、営業部で撮った今日の写真が欲しいって言ってました」
ちづが言う。
「了解。今、整理するね」
咲は自分のカメラから、パソコンへデータを取り込んだ。取り込まれた順から、モニタに表示される。
響の笑っている写真が目に飛び込んできた。
隣を見ると、まだ舞台から降りたままの顔をしている。服だけスーツに変わった。
「化けたね」
樹が響をまじまじと見つめた。「なんで、伊達眼鏡なんだ? ファッション?」
「別に、意味はありません」
取りつくしまもない、答え。
樹は肩をすくめた。
「容貌は変わっても、中身は変わんねーか」
「今日、飲みに行こう」
芝塚課長が言った。「成功を祝って」
「いいですね」
ちづが嬉しそうに賛成する。
「俺は遠慮しておきます」
響が言った。
「のりが悪いなあ」
樹が顔をしかめる。「鈴木は行くよな」
「う……ん」
咲はちらっと横を見た。
「遅れていくわ。写真の仕分けして、早めに渡したいから」
「明日でもいいんじゃないのか、それ」
樹が訝しげに尋ねた。
「明日には明日の仕事があるの」
咲はそう曖昧に笑った。
「じゃあ、鈴木は終わったら来いな」
芝塚課長はポンと咲の肩をたたくと、樹とちづを連れて営業部を出て行った。
みんなクタクタだったけれど、どこか高揚感が残っている。
「社内広報が、営業部で撮った今日の写真が欲しいって言ってました」
ちづが言う。
「了解。今、整理するね」
咲は自分のカメラから、パソコンへデータを取り込んだ。取り込まれた順から、モニタに表示される。
響の笑っている写真が目に飛び込んできた。
隣を見ると、まだ舞台から降りたままの顔をしている。服だけスーツに変わった。
「化けたね」
樹が響をまじまじと見つめた。「なんで、伊達眼鏡なんだ? ファッション?」
「別に、意味はありません」
取りつくしまもない、答え。
樹は肩をすくめた。
「容貌は変わっても、中身は変わんねーか」
「今日、飲みに行こう」
芝塚課長が言った。「成功を祝って」
「いいですね」
ちづが嬉しそうに賛成する。
「俺は遠慮しておきます」
響が言った。
「のりが悪いなあ」
樹が顔をしかめる。「鈴木は行くよな」
「う……ん」
咲はちらっと横を見た。
「遅れていくわ。写真の仕分けして、早めに渡したいから」
「明日でもいいんじゃないのか、それ」
樹が訝しげに尋ねた。
「明日には明日の仕事があるの」
咲はそう曖昧に笑った。
「じゃあ、鈴木は終わったら来いな」
芝塚課長はポンと咲の肩をたたくと、樹とちづを連れて営業部を出て行った。