不思議な眼鏡くん
突然咲は、自分は上司失格のような気がしてきた。

そういえば、芝塚課長は咲や他の部下を、よく食事に誘った。咲が「つらい」と思うタイミングを見て、会社の外でも助け舟を出してくれた。

理想の上司。

「田中くん、今日、食事にいかない?」
咲は思い切って響を誘った。

「仕事のこととか、会社では話せないことも、聞くから」

響は興味のなさそうな顔をした。

あ、断られるかな。
そうか、そういうの、煩わしいって思うタイプなのかも。

「いいですよ」
予想に反して、響はそう答えた。

『いいですよ』と言われて、咲はちょっと面食らう。

「じゃあ、行こう」

咲はそう言いながら、上司として響とどんな風に話をすればいいのか、皆目検討がつかない自分に焦り出したのだった。
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