不思議な眼鏡くん
青い館内の中を、人ごみに混じって歩いた。周りを見ると、カップルか家族連れがほとんど。

大きな水槽の中を、優雅に泳ぐ魚たちを見上げる。

「深い海にいるみたい」
「そうだね」

響の頬に、青白く影が映る。見れば見るほど、吸い込まれるような魅力があった。

なんでわたしなんだろう。
会社じゃ厳しいし、年上だし、かわいくもないし。

クラゲが浮遊するトンネルを通った。

「ハートがついてるクラゲをみつけるといいって」
水槽に貼られているガイドにそう書いてあるのをみつけると、咲は俄然見つけたくなった。目を凝らして水槽の中を覗き込む。

カシャンと音がした。振り向くと響がスマホで写真を撮っている。

「すごい、必死」
笑ってる。

「だっているなら見たいでしょう?」
「なんでも全力なんだね」
響がもう一度写真を撮った。

「頑張ったら、なんかいいことありそうだもの」
咲がそう言った瞬間「ほら、あそこ」と響が指指す。

見ると水槽の奥側にハートのついたクラゲがふわふわと浮いていた。

「本当にいた」
咲は嬉しくなった。

「こっちにくるよ」
響がいったとたん、クラゲが二人の方によってきた。不思議なことに、響の指先をたどるように、ゆっくりとクラゲがトンネルの天井を通過していく。

「わあ、なんだか向こうからこっちが見えてるみたい」
咲がいうと「きっとね」と響が同意した。
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