不思議な眼鏡くん
アシカのショーとペンギンを見て、水族館を堪能する。

途中、アシカのいる屋外のカフェで、二人でブルーのソフトクリームを分けっこした。

「寒い」
一口食べてから、冬に食べるのは無謀だったと悟った。
「でも、おいしい」

咲はソフトクリームを食べてから、足をジタバタさせて暖をとる。響も「寒っ」と身を震わせた。

「二人であったかくなるところ、行こうか」
響が咲の耳元で囁いた。

咲の心臓が口から飛び出しそうになる。
「なっ、ちょっと!」

響が笑いだした。
「咲さん、エロいこと考えすぎ」

「かっ、考えてないよっ」
「別にいいけど、考えても。エロいことは、のちのちするし」

響はそう言って、咲の頬に軽くキスをした。


それから、お土産ショップで、二人揃いのキーホルダーを買った。

「ベタなお土産」
響が銀色のイルカがついたキーホルダーを眺める。

「いいの」
咲は嬉しくてしょうがない。こんな風にお揃いを持つなんて、人生で初めてだ。

「どこつけんの?」
「鍵に」

咲はバッグから自分の鍵を取り出して、キーホルダーをつけようとした。

「そっちの鍵じゃない」
響が咲の手を押さえた。「こっち」

手のひらに、新しい鍵を乗せる。

「これは?」
「俺の部屋の鍵」
響が微笑む。「そのイルカ、こっちの鍵につけて」

咲は驚いて響を見上げた。
「……いいの?」

「いいに決まってる。咲さん、俺の恋人だもん」
「……恋人」

咲はその新しい言葉に、どぎまぎする。

「あれ、俺たち付き合ってない?」
響が顔を覗き込む。

「つ、付き合って、ます」
咲は早口でそう言った。胸のドキドキが止まらない。

響は鍵にイルカをつけて、咲の手のひらに乗せた。
「いつでも来ていいから」

そう言った。
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