不思議な眼鏡くん

結局、夜の十二時まで飲みの席は続いた。登戸常務から「期待してるぞ」と言われるたびに、適度なプレッシャーを感じる。でもそのプレッシャーを心地よいと思えるほど余裕があるのは、プライベートの方でも響に求められているからだ。

今が一番、自分に自信がある。

六本木の響の家につくと、もう響は眠っていた。ベッドルームのナイトランプだけが付いていて、中を覗くと響は白いまくらを抱くように丸まっている。

咲は音を立てぬようそっとバスルームに入り、手早くシャワーを浴びて寝支度をした。

大きなあくびを一つ。

最近、寝不足ぎみだ。二人でベッドに入ると自然といろいろに発展して、眠る時間が削られてしまう。

それでも、すごく幸せなんだけど。

咲はバスルームに一人、照れて笑ってしまった。


静かにベッドに入り込む。隣で響がもぞもぞと動いた。

「……おかえり」
響がまくらに顔をつけたまま、こもったような声で言う。

「ただいま。起こしちゃったね、ごめん」
咲が布団にすっぽり入ると、響の腕が伸びてきて咲をギュッと抱きしめた。

「どうだった?」
響が尋ねる。

「早く帰りたかった」
咲が答えると、響が「はは」と笑う。

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