不思議な眼鏡くん

でも咲の理性が、言葉を寸前で飲み込んだ。

「問題なんかないよ、大丈夫。でもありがとうね」

樹は複雑な顔をして、それから「わかった」と引き下がった。

お互い仕事に戻ったが、咲は思い直したように手を止めて、スマホを手に取る。

「今夜、やっぱり会いたい。確かめたいことがあるの」
そうメールを打った。

するとすぐに「わかった」と返事。

咲はスマホをデスクに置くと、目を閉じて一つ息をつく。

わからないことがあるから、不安になって、怖くなるんだ。
全部、説明してもらおう。
全部聞いたら「なんだ、そんなこと」って、納得できるはず。

逃げない。
変に逃げて、響を傷つけ、失うことはしたくない。

咲はやっと仕事に頭を切り替えた。

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