不思議な眼鏡くん
スマホのアラームが鳴った。
「ん……?」
咲はベッドから身を起こした。
カーテンからは朝の光。空気中に埃が舞っているのが見える。自分の姿を見下ろすと、いつものパジャマを着ていた。
自宅だ。
咲は額に手を当てた。
「夢?」
『さよなら』と言った声が、耳に残っている。響が特別な力を持ってるっていう、そんなおかしな夢を見たんだろうか。
咲の胸に、ブワッと不安がこみ上げてきた。
「まさか」
咲はスマホを手に取ると、響に電話をかけた。
そんなわけない。ただの夢。きっとそう。
『おかけになった電話番号は、現在使用されておりません』
咲は信じられなくて、何度も掛け直した。それでも電話は繋がらない。
「うそ……」
咲はベッドから勢いよく立ち上がる。
何かの間違いよね。ただの夢よね。あの夢が現実だなんて、そんなこと信じられない。
咲は慌てて身支度を整えると、部屋を飛び出した。