不思議な眼鏡くん
エンディング
「おつかれさまでした」
隣の席に座る、今年の四月に入社した男の子が頭を下げた。
「おつかれさまでした」
咲は笑顔で返した。
「鈴木主任は、おかえりにならないんですか?」
陽気で誰にでも好かれるタイプのその社員は、気軽な感じで尋ねる。「今日はクリスマスですよ」
「特に予定もないし」
咲はおどけるようにそう言うと、手元の書類をめくった。
「主任、同期の男の中じゃすごい人気なんです。彼氏がいなかったら、俺、立候補しようかなあ」
カバンを抱えて、楽しそうに言う。
「またまた、そんなこと。クリスマス楽しんできてね。おつかれさま」
咲は軽くいなすと、手を振った。
「ちぇ」
新入社員はちょっとふてくされたようは顔をして、それからパッと笑顔になる。
「お先です」
新入社員は頭を下げて、営業部を楽しげな様子で後にした。
咲は再びモニタに向き直る。それから集中して仕事をし始めた。
仕事は順調だ。新ブランドの名前も、女子高生を中心に定着した。出店数も多くなり、咲のチームにも、もう二人ほど人を入れようかと言われている。
「鈴木、帰んないの?」
樹が自分のパソコンの電源を落としながら尋ねた。
「うん、まだちょっと」
「頑張るな」
「まあね」