不思議な眼鏡くん
咲は響の腕の中に飛び込んだ。響は強く抱きしめ、髪に顔を埋める。
懐かしい香り。胸の感触。
彼は確かに存在する。
「愛してるんだ」
響のその、低く掠れた声。
何度も思い出したその声。
咲は顔を上げ、響を見た。目が真っ赤になっている。
この人を思うとき、いつだって笑顔になる。
それは、これから未来永劫変わらない。
咲は微笑んだ。
「わたしも、愛してるわ」
不思議なことは世の中にたくさんあるけれど、数多いる人々の中から唯一特別な人に出会えることが一番の奇跡。
二人は青白く光る街路樹の下で、長くて甘いキスをした。
《完》