不思議な眼鏡くん
「オッケー。じゃあ、一緒に寝るだけ」
「嘘でしょ」
咲は思わずつっこんだ。
「嘘じゃないって。何もしないよ。ベッドで寝るだけ。だってもう二時だよ。もう寝ないと明日に響くし、だいたいドアが開かないんじゃ帰れないよ」
「だからそれはフロントにお願いして……」
咲が言いかけると、響はまた笑う。
今度はそう、咲の無知をあざ笑ってるみたいに。
「こういうところ初めてだから、知らないんだろ。一旦入っちゃったら、朝まで開かないもんなんだよ」
「そ、そうなの?」
「そうだよ」
さも当然という顔で響は言った。
本当にそんなことあるの?
「気にするなよ、そんなこと。シャワーでも浴びてくれば?」
響はベッドから立ち上がると、テレビ下の冷蔵庫からビールを取り出した。プシュッとタブを引っ張る。
なんか騙されてる気が……。
咲はもう一度ドアを引っ張ってみたが、やっぱり開かない。鍵がすぐに閉まってしまう。
こういうものなの?
ラブホテルって、なんだか変。
「さっぱりしておいで」
響は、ベッドの上にあぐらをかいた。テレビをつけて、すぐに咲に興味を失ったようにテレビに集中し始めた。
咲は、響の隣に座る勇気もなく、言われるがままにバスルームへと入っていった。