不思議な眼鏡くん
響は髪をしばらく弄ぶと、咲の額に手のひらを当てた。そのまま優しく手ぐしで髪をすく。

何度も。
何度も。

なんか、気持ちいい。

咲はだんだんと緊張がほぐれてきた。
思わず瞳を閉じる。

「鈴木さんは、ずっとそんな顔でいた方がいい」
響が言った。

目を開けて、響を見る。「そんな顔って?」

「今みたいな顔」
響が言う。

「わからない。今どんな顔して……」
「きれいだよ」

響が少し身を起こし、咲の耳に髪をかける。指が耳の後ろから首をなぞった。

「あ」
思わず声が漏れる。咲は慌てて口を押さえた。

響が耳の後ろに唇を当てた。温かくて柔らかな感触。

少しきつく吸われた気がした。

「また、初めてをもらった」
響が満足そうに言う。

「ねえ、何もしないって言ったのに」
咲が弱く抗議してみる。

「してないよ。本当はもっとスゴイこと、しようと思ってたけど」
耳元に低い声が響く。

それから響は、咲の額に、まぶたに、頬に、そっと口付けた。飽きることなく、ずっと長く、優しく唇を落としていく。

咲は響のガウンの前を掴んで、緊張と、それから経験したことのないような心地よさを行ったり来たり。

「俺の胸に耳を当てて」
響が咲をぎゅっと引き寄せる。

肌の暖かさと鼓動。

「もしかして、ちょっと早い?」
小さく尋ねた。

「ドキドキしてるんだ」
響が咲の頭のてっぺんにキスをした。
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