不思議な眼鏡くん
咲は五メートルほど離れた芝塚課長の席の前に立った。罪悪感で胸がジリジリする。

「ああ、鈴木。待ってた。こっちきて」
緊張する咲をリラックスさせるように、笑いかける。

三十代半ば。端正な顔立ちで、社内にファンも多い。
けれど左手の薬指には指輪がはめられていた。

芝塚課長は書類を持って、営業部の一角にある打ち合わせ室に入ると、蛍光灯をつけた。

「座って」
自分もパイプ椅子を引き出して座る。

咲は芝塚課長の真向かいに座った。何を言われるのか想像できない。

本当は、先ほど書類をシュレッダーに入れてしまった件を報告しなくちゃいけない。こうやって呼び出されたのは、神さまが「正直に」と警告しているということなのだろうか。

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