不思議な眼鏡くん
山手線に乗った。平日の午後。それほど混んではいない。
二人は扉付近に並んで立った。

話しかけないのも気まずいが、どう話しかけていいかもわからない。

極力、普段通りに。仕事の話に終始する。

「最近、営業成績が伸びてるみたいね」
咲は話しかけた。

「はい」
「努力してるのね」

咲がそう言うと、響は鼻で軽く笑った。

「努力なんて、してませんよ」

その言葉に敵意が感じられて、咲は驚いた。この二週間、まるで能面のようになんの表情も見せなかった響が、初めて見せた感情。

「謙遜してるの?」
「さあ」
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