不思議な眼鏡くん
「もしかして」
咲は響の背中に声をかけた。
響が振り返る。
「もしかして、田中くんって、メンタリストなの?」
響は「は?」と口を開く。
「メンタリスト。テレビで有名な人いるじゃない? 隠したものを、人の視線とか読み取ってみつけちゃう人」
咲の中で、合点がいった。
そうだ、この人きっと、人の心を操るメンタリストなんだわ。
「でもね」
咲は響の横に立つ。「営業は、人間関係からなるものだから、ほどほどがいいと思うわ」
響がぶはっ吹き出した。
「メンタリストって」
「違うの? じゃあ、どうしてあんな……」
さっきの出来事が頭の中をよぎる。あんな風に営業の仕事ができるわけがない。
「メンタリストとか、俺知りませんし。ウケる」
響が笑いをこみ上げるように、口元に手を当てて歩き出す。
咲はわけが分からず首をひねる。
結局、響はどういう魔法をつかってあんな風に仕事ができるのか、分からずじまいだった。