不思議な眼鏡くん

社員旅行当日は、思いの外暖かかった。上野駅から特急に乗って、高崎へ。

電車の中は、チームごとの座席指定となっていた。
「この恒例行事、必要なんだろうか」

毎年文句の多い樹が、上の棚に自分の荷物を入れながら言った。

「親睦を深めるためだし」
咲がいうと「優等生だな、お前は」と皮肉を言ってくる。

「あげる?」
樹が手を出したので、咲は自分の荷物を手渡した。「ありがとう」

樹と並んで座る。後ろには響とちづ。
ちずはなにやら楽しそうに話している。

何をそんなに楽しそうに話してるんだろか。

そんなことをふと考えて、咲は「だめだめ」と考えを振り払った。

彼のことは、気にしない。ただの部下なんだから。

電車が動き出した。窓の外の景色があっという間に後ろへ流れていく。
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