不思議な眼鏡くん
ドスン!
突然、坂上部長が尻餅をついた。痛さで顔が歪む。

咲は驚いて坂上部長から飛び退いた。

「あれ、なんだこれ。立ち上がれないぞ」
坂上部長が床でもがき出した。

お尻が床にくっついてる。
でもそんなことってあるの?

「鈴木、手をくれ!」
坂上部長が悲鳴に近い声を上げる。

咲は言われるまま手を伸ばしたが、後ろからぐっと手を掴まれた。

「助ける必要ないだろ?」
振り向くと、響がいた。同じく大浴場から出てきたようで、浴衣を着ている。

「でも」
咲は、パニックになっている坂上部長を振り返る。

「どれだけお人好しだよ。そのうち立てるようになる」
響はそう吐き捨てるように言うと、咲の手を引っ張った。

「行こう」
そして、歩き出した。

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