不思議な眼鏡くん

社員旅行が終われば、すぐに冬。年末を控えて、営業部は忙しさを増す。

咲のチームは、年明けのファッションショーの準備に余念がない。今回は新ブランド。新しいことが山積みで、咲の頭はグルグルし通しだ。

グルグルなのは、仕事のせいだけじゃないけれど。

いつにも増して、緊張して会社に来ている。

このままだと、ぜったいわたしはミスする。だってちょっと気をぬくと、すぐに隣の田中くんのことを考えてしまうから。

初恋は小学校五年生のとき。優しくしてくれた隣の席の男の子を好きになったけれど、転校してしまった。

二回目の恋は中学生のとき。隣の席の男の子。やっぱり優しかった。子供っぽい他の男子達とどこか一線を画してて、なんだか惹かれたっけ。

あれ、わたし、隣の人なら、誰でもいいのかなあ?

咲はツップした。

自分の手近感が、恥ずかしい。っていうか、年下だし、部下だし。
趣味がセックスとか言っちゃう、危険人物だし。

咲は思わずゴンゴンと額を机にぶつけた。
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