不思議な眼鏡くん
夕方。
咲は、ファッションショーの招待状の文面を、書いては消し書いては消しを繰り返していた。今、咲のチームの他の三人は、外回りで出ている。
もっと、読んだ人がぐっと心を掴まれて、『ぜひみたい』と思ってもらえるような、そんな文章がかけないだろうか。
無難な仕上がりに、満足できない。もっとできる気がする。
「おお、いよいよ招待状か」
後ろを通りがかった芝塚課長が、パソコンの画面を見て言った。
「あっ、すみません」
慌てて飛び起きる。
「どうした?」
芝塚課長に優しく見下ろされると、響が好きだと気付いた後でも胸がキュンとなる。本当に素敵な人だ。
「招待状の文面が、もっとうまく書けないかと思いまして」
「そうか」
顎に手を当て軽く首をかしげる。それから「営業部の資料室、行ってみたらどうだ?」と言った。
「昔からの招待状が、全部保存されてるんだ。レトロでいい感じだよ。参考にしたらいい」
咲の目がぱっと輝いた。
「わかりました! ありがとうございます!」
咲は勢いよく立ち上がった。