不思議な眼鏡くん
第三章
一
仕事が手につかない。恐れていたことが起きている。
今朝、パジャマのズボンを脱ぎ忘れて、玄関で靴を履いてしまった。定期券もまた忘れるし、間違えて快速電車に乗ってしまった。窓から通り過ぎる降車駅を眺めていても、しばらくはそのまま気づかなかったのが、痛すぎる。
「鈴木主任?」
ちづに話しかけられて、はっと我に返った。
「……大丈夫ですか?」
ちづが顔を覗き込む。
「ごめん、何だっけ?」
「ブランドマネージャーとの打ち合わせの件ですが」
「そうそう」
咲だけが、あの電車に取り残されている。イルミネーションに誘われただけなのに、舞い上がっている。
「鈴木さん、なんか変」
ちづに言われて、咲は文字通り飛び上がった。響が今外に出ていることが、せめてもの救いだ。
「そう、かな?」
「なんだか、いつも顔が赤い気が。もしかして風邪ですか?」
「そ、そうかも」
咲は笑って取り繕った。
「もうお昼ですね」
ちづが営業部を見回す。「食べに出ませんか? 久しぶりに美味しいパスタが食べたいです」
「そうだね」
咲はその提案に乗っかった。頭を切り替えたいという気持ちも強かったから。
「西田さんも、田中くんも外だし、女子だけでお話ししましょうよ」
ちづはそう言って、笑顔を見せた。
今朝、パジャマのズボンを脱ぎ忘れて、玄関で靴を履いてしまった。定期券もまた忘れるし、間違えて快速電車に乗ってしまった。窓から通り過ぎる降車駅を眺めていても、しばらくはそのまま気づかなかったのが、痛すぎる。
「鈴木主任?」
ちづに話しかけられて、はっと我に返った。
「……大丈夫ですか?」
ちづが顔を覗き込む。
「ごめん、何だっけ?」
「ブランドマネージャーとの打ち合わせの件ですが」
「そうそう」
咲だけが、あの電車に取り残されている。イルミネーションに誘われただけなのに、舞い上がっている。
「鈴木さん、なんか変」
ちづに言われて、咲は文字通り飛び上がった。響が今外に出ていることが、せめてもの救いだ。
「そう、かな?」
「なんだか、いつも顔が赤い気が。もしかして風邪ですか?」
「そ、そうかも」
咲は笑って取り繕った。
「もうお昼ですね」
ちづが営業部を見回す。「食べに出ませんか? 久しぶりに美味しいパスタが食べたいです」
「そうだね」
咲はその提案に乗っかった。頭を切り替えたいという気持ちも強かったから。
「西田さんも、田中くんも外だし、女子だけでお話ししましょうよ」
ちづはそう言って、笑顔を見せた。