不思議な眼鏡くん
会社から徒歩五分ほどのイタリアン。会社の人がよく利用する店だ。

ちづとは年が三つ離れている。年代も近いし同性なので気が楽だ。仕事以外の話もできる。

窓際に座った二人は、一緒のランチセットを頼んだ。

「おいしい、やっぱりここのパスタ最高ですね」
ちづが可愛く言った。

「ほんと」
咲も一口食べた。

「世の中はクリスマスかあ」
ちづがため息混じりの声を漏らした。「社会人になってから、クリスマスに特別感なくなりましたよね」
「そうだね。普通に仕事あるし、残業するし」
笑って答えた。

「鈴木主任、クリスマスの予定はあります?」

パスタをごくんと飲み込む。それからできるだけ冷静に「ないわ」と言った。

「じゃあ、私の勘違いかなあ。鈴木主任、最近すごく華やいでるから、てっきり恋してるんだと」

ちづは、アイスティーのストローを口にくわえて言った。

「華やいでる?」
咲は驚いて自分の顔を触った。

またもや、すごく締まらない顔をしてるのかしら。

「きれいになりました、なんだか。それに、雰囲気も柔らかくなって、話しかけやすくなったっていうか。上から目線ぽくって申し訳ないんですけど」
ちづが小さく頭を下げた。
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