不思議な眼鏡くん
会社で隣の席に座っていると、クリスマスの約束が果たして本当の約束だったのか、わからなくなってくる。ともかく響は、いつもと変わらず静かで、無感情のように見えた。

そもそも。

咲はパソコンの前で、考える。

イルミネーションを見にくことに、特別な意味はないよね。だって、見るだけだもの。それにわたしは一度、「ダメ」って拒絶してる。きっと、わたしは勘違い女で、痛くって、やばくって、救いようがないんだわ。そんなことばっかり、何度も考えて。

考えても意味なんかないのに!

「鈴木さん」
響が声をかけてきた。

「は、はい?」
「金額のゼロが多いんじゃないですか、それ」

響が画面を指差した。

「あっ」
桁が二つも多くなってる。

「ありがとう。これで送信してたら、大問題だった」
咲は慌ててデリートキーを押した。

「やっぱり」
響が小さな声で言う。

「『なんでもうまくできるタイプじゃない』って、本当なんだ」
響の口元がちょっと笑う。

「当日に誘ったほうが、よかったですね」

咲の顔がボンッと破裂したみたいに真っ赤になる。

咲は勢いよく席を立ち上がると、トイレに走った。
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