不思議な眼鏡くん
二
そもそも咲は、器用な方じゃない。シュレッダーの件でもわかるように、かなりのおっちょこちょいだ。
でも芝塚課長の下についたとき、完璧じゃない自分が認められるためには、細心の注意を払い、準備を整え、気を張って仕事に挑む必要があると気がついた。ちょっとでも気をぬくと、信じられないようなミスをするのだ。だから咲は、社内ではずっと緊張している。そのおかげもあってか、営業成績は順調。
でも社内では「愛想がない」と言われることが多かった。特に男性社員の間では「鈴木は顔はいいけど、怖いしな」と評判だ。
咲自身、そんな風に言われていることは知っている。でも、男性社員に愛想よくして大きなミスをするよりも、仕事に徹していたほうが気がラクだ。何より、女子大出身の咲にとって、男性と「楽しく」話すことは、仕事をこなすことより難しい。
今年二十八歳。お付き合いをした男性は一人もいない。
これまでチャンスがなかったわけじゃないけれど、好きになる人に好かれるという「奇跡」のような出来事には、出会ったことがなかった。
でも芝塚課長の下についたとき、完璧じゃない自分が認められるためには、細心の注意を払い、準備を整え、気を張って仕事に挑む必要があると気がついた。ちょっとでも気をぬくと、信じられないようなミスをするのだ。だから咲は、社内ではずっと緊張している。そのおかげもあってか、営業成績は順調。
でも社内では「愛想がない」と言われることが多かった。特に男性社員の間では「鈴木は顔はいいけど、怖いしな」と評判だ。
咲自身、そんな風に言われていることは知っている。でも、男性社員に愛想よくして大きなミスをするよりも、仕事に徹していたほうが気がラクだ。何より、女子大出身の咲にとって、男性と「楽しく」話すことは、仕事をこなすことより難しい。
今年二十八歳。お付き合いをした男性は一人もいない。
これまでチャンスがなかったわけじゃないけれど、好きになる人に好かれるという「奇跡」のような出来事には、出会ったことがなかった。