不思議な眼鏡くん
どんなに必死にやっても、定時までには終わらない。
これほど自分を、ダメだと思ったことはない。誰かを好きになったら、とたんに仕事への集中力がなくなってしまうなんて、最低だ。
咲はパソコンの前で、顔を覆った。
「残業?」
樹が隣に立って、咲を見下ろしていた。
「うん、ごめんなさい」
咲は樹の何処と無くホッとした顔を見て、複雑な気持ちになる。
「仕方ないよ。また別の時に」
樹が言いかけたとそのとき「俺、やりますよ」と右から声が聞こえてきた。
見ると響が咲の方へ手を差し出している。
「書類、俺やります」
「でも」
「いいです。俺、今日、何もないですし」
響がちらっとこちらを見た。冷たい、無感情な視線。
「西田さんと、予定があるんですよね?」
響はそう言うやいなや、咲の書類を手に取った。
「データ、サーバーにあげてください」
打ちのめされた。涙がこみ上げそうになるのを、ぐっとこらえる。
強い拒絶。響とのつながりは完全に途切れてしまった。
「どうぞ、早く、行ってください」
響が追い打ちをかける。
「ありがとう」
咲は小さくそう言って、帰り支度を始めた。
これほど自分を、ダメだと思ったことはない。誰かを好きになったら、とたんに仕事への集中力がなくなってしまうなんて、最低だ。
咲はパソコンの前で、顔を覆った。
「残業?」
樹が隣に立って、咲を見下ろしていた。
「うん、ごめんなさい」
咲は樹の何処と無くホッとした顔を見て、複雑な気持ちになる。
「仕方ないよ。また別の時に」
樹が言いかけたとそのとき「俺、やりますよ」と右から声が聞こえてきた。
見ると響が咲の方へ手を差し出している。
「書類、俺やります」
「でも」
「いいです。俺、今日、何もないですし」
響がちらっとこちらを見た。冷たい、無感情な視線。
「西田さんと、予定があるんですよね?」
響はそう言うやいなや、咲の書類を手に取った。
「データ、サーバーにあげてください」
打ちのめされた。涙がこみ上げそうになるのを、ぐっとこらえる。
強い拒絶。響とのつながりは完全に途切れてしまった。
「どうぞ、早く、行ってください」
響が追い打ちをかける。
「ありがとう」
咲は小さくそう言って、帰り支度を始めた。