不思議な眼鏡くん
「鈴木さん?」
突然声をかけられて、咲は飛び上がった。
振り向くと響が立っている。モニタの青白い光が白いシャツに反射していた。
「あ、ありがとう」
咲は動揺しながらも頭を下げた。
「これ、こんな遅い時間までかかって、終わらせてくれて」
「それを言うために、会社に戻ったんですか?」
咲はぐっと詰まる。緊張で心臓にぎゅっと痛みが走る。
「あの、わたし」
咲は、大きく息を吸い込む。
言わなきゃ。
「わたし、本当は、田中くんとイルミネーションを見に行きたかった、です」
響が咲をメガネの奥からじっと見つめる。モニタの明かりが反射して、実際はあの瞳をみられなかったけれど、それでも強い視線を感じた。
体が固まる。咲は拳を強く握った。
「走ってきた?」
気づくと、響はすぐ目の前に立っていた。
「え?」
「汗、かいてる」
咲は恥ずかしくて慌てて額をぬぐった。
「行く?」
響が言った。
咲は顔を上げる。
「今から、観に行く? 遅いけど」
響の口元に笑みが見えた。
「……行く」
咲は頷いた。