不思議な眼鏡くん
夜九時のオフィス。
事務職の女性社員はすべて帰宅しているが、営業はちらほら残っている。咲のチームは、樹とちづが外回りからの直帰で、響は先ほど会社に戻ってきたばかりだ。
咲はちらっと後ろを振り返った。
あ、芝塚課長、帰宅するんだ。
窓の外に広がる夜空を背に、トレンチコートを羽織っている。その仕草が仕事終わりだとは思えないほど颯爽としていて、咲の胸が高鳴った。
「お先に。お疲れ」
横を通り過ぎるとき、芝塚課長が咲と響に声をかけた。
「はい、お疲れさまでした」
咲は精一杯の笑顔を向ける。
少しでも印象よくしていたい。
芝塚課長のコロンが空気にふわっと漂って、咲は幸せな気持ちになった。
しばらくすると、隣のシマに座るチームから声が漏れ聞こえてきた。
「ああ、本当に素敵、芝塚課長。奥さんと社内で大恋愛だったらしいよ〜。うらやましい」
「めちゃくちゃ可愛いくて、男性社員の中でもダントツ人気だったんだって」
「へえ」
そんなたわいもないおしゃべりが耳に入って、幸せだった咲の気持ちがトーンダウンする。
わかってるもの。芝塚課長は結婚してるってこと。
見てるだけなら、罪にはならないよね。
事務職の女性社員はすべて帰宅しているが、営業はちらほら残っている。咲のチームは、樹とちづが外回りからの直帰で、響は先ほど会社に戻ってきたばかりだ。
咲はちらっと後ろを振り返った。
あ、芝塚課長、帰宅するんだ。
窓の外に広がる夜空を背に、トレンチコートを羽織っている。その仕草が仕事終わりだとは思えないほど颯爽としていて、咲の胸が高鳴った。
「お先に。お疲れ」
横を通り過ぎるとき、芝塚課長が咲と響に声をかけた。
「はい、お疲れさまでした」
咲は精一杯の笑顔を向ける。
少しでも印象よくしていたい。
芝塚課長のコロンが空気にふわっと漂って、咲は幸せな気持ちになった。
しばらくすると、隣のシマに座るチームから声が漏れ聞こえてきた。
「ああ、本当に素敵、芝塚課長。奥さんと社内で大恋愛だったらしいよ〜。うらやましい」
「めちゃくちゃ可愛いくて、男性社員の中でもダントツ人気だったんだって」
「へえ」
そんなたわいもないおしゃべりが耳に入って、幸せだった咲の気持ちがトーンダウンする。
わかってるもの。芝塚課長は結婚してるってこと。
見てるだけなら、罪にはならないよね。