不思議な眼鏡くん
三
一月も半ば。
咲のチームに、正念場がやってきた。
新ブランドのファッションショーがあるのだ。
このファッションショーはメディアにも流れるし、イメージモデルがランウェイを歩くことになっている。
店舗拡大のチャンスだ。
新ブランドに関わるあらゆる部署が、一丸となって望む。営業ニ課にも力が入っていた。
有楽町の大きめなショースペース。空を見上げると、今にも雪がふりそうなどんよりとした曇り空。
「どうかふりませんように」
咲は小さな声で祈った。
広い会議室に入ると、ハンガーに吊るされたたくさんの衣装。化粧をするための鏡がずらっと並べられている。
続々と長身のモデルが入ってきた。新ブランドはティーンを対象としているため、若くてハツラツとした感じの子が多い。ヘアメイクが始まった。
「鈴木さんっ、座席の確認お願いします」
ちづが走ってきた。
「はい」
咲は書類を受け取ると、チェックする。
「西山デパートの榊様、確かお二人でいらっしゃるって伺ってたはずだけど」
「あっ、そうでした。すみません、もう一席確保してきます」
「あとこの位置、カメラが入るんじゃないかな。お得意様だから、もっと見やすいところに変えてあげてほしいわ」
「はい」
「でも、広報とも確認してね。動かせないものがあるかもしれないから」
「はい」
確認を済ませると、ちづがまた走り出そうとするので「横山さん、落ち着いて。大丈夫だから」と背中に声をかけた。
ちづがはっと立ち止まり、それから頭を下げた。一つ息を吐いて、しっかりした足取りで歩き出す。
仕事は山積みで、追われているような気分になるが、こんな時こそ落ち着かなきゃいけない。
咲のチームに、正念場がやってきた。
新ブランドのファッションショーがあるのだ。
このファッションショーはメディアにも流れるし、イメージモデルがランウェイを歩くことになっている。
店舗拡大のチャンスだ。
新ブランドに関わるあらゆる部署が、一丸となって望む。営業ニ課にも力が入っていた。
有楽町の大きめなショースペース。空を見上げると、今にも雪がふりそうなどんよりとした曇り空。
「どうかふりませんように」
咲は小さな声で祈った。
広い会議室に入ると、ハンガーに吊るされたたくさんの衣装。化粧をするための鏡がずらっと並べられている。
続々と長身のモデルが入ってきた。新ブランドはティーンを対象としているため、若くてハツラツとした感じの子が多い。ヘアメイクが始まった。
「鈴木さんっ、座席の確認お願いします」
ちづが走ってきた。
「はい」
咲は書類を受け取ると、チェックする。
「西山デパートの榊様、確かお二人でいらっしゃるって伺ってたはずだけど」
「あっ、そうでした。すみません、もう一席確保してきます」
「あとこの位置、カメラが入るんじゃないかな。お得意様だから、もっと見やすいところに変えてあげてほしいわ」
「はい」
「でも、広報とも確認してね。動かせないものがあるかもしれないから」
「はい」
確認を済ませると、ちづがまた走り出そうとするので「横山さん、落ち着いて。大丈夫だから」と背中に声をかけた。
ちづがはっと立ち止まり、それから頭を下げた。一つ息を吐いて、しっかりした足取りで歩き出す。
仕事は山積みで、追われているような気分になるが、こんな時こそ落ち着かなきゃいけない。