なにがどうしてこうなった!?
頭が少しずつ覚醒しているのか状況がつかめてきた。
ああそういえば、紗綾をかばって斜面を転がり落ちたんだっけ。
徐々の覚醒と同時に、体のいたるところが鈍く痛む。
看護師さんが私の様子を見ながら覚醒後の軽い検査をする。
「先生に連絡したので、しばらくお待ちください」
看護師さんが出ていく頃には、キチンと話せるようになっていた。
「お母さん心配かけてごめんね」
「本当よ! 学校から電話あったときは生きた心地がしなかったんだから」
私の手をぎゅっと握りしめ、目にうっすらと涙を浮かべながらいう母を見て、私もじわじわとあの時の恐怖が実感を帯びて目じりから涙がこぼれた。
「お父さんも本当は来たがっていたんだけど出張で、すぐには帰ってこれないみたい。
さっき目が覚めたってグループで言ったら二人とも安心していたよ。
裕也は学校がもうすぐ終わるから、終わったらくるって」
学校が終わる時間と言われて、右側にある大きな窓を見ると空は晴れていた。
日の入り時刻まではまだあるらしい。
私が最後に見た空は、あんなにも曇っていたのに。
こんなにきれいに晴れるのなら最初から晴れていなさいよ。
記憶の中の曇天とは違う、晴れた空に向かって毒づく。
今日の私にはそれくらいの権利があっていいでしょう。
恨みがましく空を見ていると、床頭台にある、思い出のものとはだいぶ色もあせたものが目につく。