なにがどうしてこうなった!?
家の近くまで来ると亮ちゃんは立ち止まり、沈黙を破った。
「なんで待たなかったんだ……!」
この前に聞いたけど、私に初めて向けられた亮ちゃんの低い声。
……怒ってる。
「……ごめ…ん……。
……大丈夫だと思ったの。
逃げられるって……」
実際その時は逃げ切れてた。その時は……。
繋いだ手が少しきつく締まった。
「でも逃げ切れてなかった。
……俺が来なかったどうなってたと思ってんの?」
ゾクッと悪寒が背筋に走った。
さっきから歩きずらいと思っていたけど、私、今震えてるのか。
自覚したら震えが少し大きくなり、止めようと思えば思うほど止まらなくなった。
震えを止めることに気を取られていると、ふわっと包まれる感覚と共に温もりを感じた。
亮ちゃんに、抱きしめられていた。
「……良かった。
美咲ちゃんが捕まってるの見た時、心臓止まるかと思った……。
ほんと良かった……」
優しく、優しく亮ちゃんが私の耳元で囁く。
あ、亮ちゃんは怒ってるんじゃなくて心配してくれてたんだ……。
そう気づいた時には両腕を亮ちゃんの背中に回していた。
そして、亮ちゃんの腕の力がさらに強く締まった。