なにがどうしてこうなった!?



家の近くまで来ると亮ちゃんは立ち止まり、沈黙を破った。


「なんで待たなかったんだ……!」


この前に聞いたけど、私に初めて向けられた亮ちゃんの低い声。


……怒ってる。

「……ごめ…ん……。

……大丈夫だと思ったの。

逃げられるって……」


実際その時は逃げ切れてた。その時は……。

繋いだ手が少しきつく締まった。


「でも逃げ切れてなかった。

……俺が来なかったどうなってたと思ってんの?」


ゾクッと悪寒が背筋に走った。

さっきから歩きずらいと思っていたけど、私、今震えてるのか。

自覚したら震えが少し大きくなり、止めようと思えば思うほど止まらなくなった。

震えを止めることに気を取られていると、ふわっと包まれる感覚と共に温もりを感じた。



亮ちゃんに、抱きしめられていた。

「……良かった。

美咲ちゃんが捕まってるの見た時、心臓止まるかと思った……。

ほんと良かった……」


優しく、優しく亮ちゃんが私の耳元で囁く。


あ、亮ちゃんは怒ってるんじゃなくて心配してくれてたんだ……。

そう気づいた時には両腕を亮ちゃんの背中に回していた。

そして、亮ちゃんの腕の力がさらに強く締まった。

< 75 / 151 >

この作品をシェア

pagetop