なにがどうしてこうなった!?
目の前の胸を押し、体を引き離す。
「戻る」
踵を返し、来た道を引き返す。
今、顔を見られたくない。
「え、ちょっと美咲ちゃん?
どうしたの?
ケガでもした?!」
「してない」
「ならなんで?」
なんて押し問答をしていると、
「あ、いた」
という慣れ親しんだ無愛想な声が聞こえた。
ちょうどよかった!
「裕也、亮ちゃんと一緒に散歩行ってきて。
私は戻るから」
裕也は、え、なんで?とか何とか言っていたけど、私は無視して歩き出した。
「美咲ちゃんちょっと待って」
亮ちゃんがついてきそうだったが
「亮くんいいよ、行こう」
と裕也が言ってくれたおかげで、亮ちゃんが追いかけてくることはなかった。
今、追いかけられてきたら、ちょっとやばかった。
亮ちゃんのことで頭がいっぱいいっぱいになってるのが裕也にはバレバレだったのかもしれない。
弟にそんな姿は見せたくなけど、亮ちゃん本人に見られるよりはましだ。
ありがと、裕也、と心の中で言った。