一匹少女が落ちるまで
まるでここで初めて紫月と出会ったあの日のように…。
「近いです、理央」
彼女とのキスを思い出した瞬間、彼女は普段と変わらない顔でそう言った。
「ムードぶち壊しじゃん」
「はい?」
「…なんでもねぇ。紫月、メガネしないほうが良いんじゃない?」
俺はそう言って、彼女から一歩離れた。
図書室、男女が本棚と本棚の間で急接近だって言うのに…。
紫月は絶対にいい意味でも悪い意味でも俺の期待を裏切らない。
「…メガネの方が楽でいいです。人とある程度の距離を保てている気がするので」
紫月はそう言って、いつもの特等席へと歩いて行った。