一匹少女が落ちるまで



まるでここで初めて紫月と出会ったあの日のように…。


「近いです、理央」


彼女とのキスを思い出した瞬間、彼女は普段と変わらない顔でそう言った。


「ムードぶち壊しじゃん」


「はい?」


「…なんでもねぇ。紫月、メガネしないほうが良いんじゃない?」


俺はそう言って、彼女から一歩離れた。


図書室、男女が本棚と本棚の間で急接近だって言うのに…。


紫月は絶対にいい意味でも悪い意味でも俺の期待を裏切らない。



「…メガネの方が楽でいいです。人とある程度の距離を保てている気がするので」



紫月はそう言って、いつもの特等席へと歩いて行った。


< 103 / 487 >

この作品をシェア

pagetop