一匹少女が落ちるまで
【side 紫月】
きっと、彼には意味なんか重要じゃなかった。
なんでもいいから、勉強する口実がないとできないんだ。
ずっと誰かのために、勉強してきた人だから。
絢さんの名前を出した時の赤羽くんの顔は、とても切なそうな顔をしていて。
あの時、絢さんと話していた赤羽くんと正反対の今の表情を見て。
なんとなくわかった。
「なんで俺が、雨宮のために…」
「人助けと思って」
「…だから」
「赤羽くんが変わるチャンスだと思うよ」
「…はぁ?」
赤羽くんの顔を見ながら思う。
これはお節介なんかじゃない。
自分のためにしていることだ。
赤羽くんが理央と勉強してくれればそれでいい。