一匹少女が落ちるまで

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「だからここは……になる」


俺と紫月の間に座っている赤羽に勉強を教える。


もともと勉強ができていた赤羽は、飲み込みが早く、さっさと俺を追い越してしまうんじゃないかというくらい、どんどん問題を解いていった。



「なんで突然勉強するのをやめたんだ」
なんて。


聞きたくて仕方がない。


でも。


聞いちゃいけない気がする。


俺たちの中には、なんとなく聞いちゃいけないことができていた。


俺が家に帰らないこと。

赤羽が突然、勉強するのをやめたこと。


紫月は特に。

あえてそれを追求しようとはしなかった。

それがきっと。


赤羽にとっても心地いいと思う。


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