一匹少女が落ちるまで
「おーい、赤羽っ!」
不意に名前を呼ばれて、顔を上げると見慣れたやつが俺の方に手を振りながら歩いて来た。
「なにー?みんなと喧嘩でもしたのー?」
スーッと、俺の許可なく俺の向かいの席に座ったのは、担任の伊達。
だいたい、こいつが桜庭に俺の勉強を見てくれと言ったのがそもそもの始まりだ。
こいつがそんなことを言わなければ、きっと今こんなところにいない。
「してねーよ。俺こーいうの無理だからあいつらだけ行った」
「うわっ!赤羽、ジェットコースター苦手なの?!」
わざとらしいオーバーリアクションにカチンとしたけど、抑える。
「悪いかよ」
「ぜんぜーん♪」
そう言っててテーブルに頬杖をついてニヤニヤする伊達がいつもよりまして気持ち悪い。