一匹少女が落ちるまで
雨宮が立っていた廊下に着いて、その先に見える扉を見つめながら、乱れた呼吸を整える。
呼吸を整えながら初めて、自分が結構なスピードでここに向かってきたのがわかった。
まるで、雨宮を見失わなように、彼女に追いつこうとするかのように。
先の扉の上には、プレートがあり、そこには『図書室』と書かれていて。
俺は、その部屋のドアを開けた。
開けた瞬間、木の香りがフワァっと広がって。
ただそれだけで、さっきまで傷ついていた心が癒される感じがした。
「…えっ、桜庭くん?」
受付にいた図書委員の女子が、入ってきた俺を見て小声でそう言った。
あぁ…ここにも。
「どうも」
俺が見たこともない彼女にそう優しく微笑むと、女子は顔を赤くした。
こう言う反応するとわかっていて、俺は学年の人気者を演じる。
汚いのは自分が1番分かっている。
俺はここにきてるはずの雨宮を探すため、図書室を歩き出す。