一匹少女が落ちるまで
「赤羽くーんっ!」
俺を呼ぶ声がして、俺は走ってくる3人の方を振りむいた。
新山が楽しそうに手を振りながら走っていた。
「すっげー楽しかったよ。赤羽もったいねー」
そう言いながら、桜庭がいたずらっぽく笑う。
「うるせー」
「よしっ!じゃあ次はお化け屋敷だね!」
生き生きとそういう新山は、クラスにいた時とは本当に別人で。
今まで城ヶ崎たちといたのが相当ストレスだったんだなと感じた。
それに…。
さっきから、いや厳密には昨日の朝から、
新山と桜庭の距離が近い気がする。
張本人たちが1番のほほんとしてるのがすげー腹立つ。
新山と桜庭の後ろで、ボケーっと遠くを見てる雨宮は、桜庭のことなんとも思ってないのだろうか。
なんて。
なんで俺がこいつらのことで頭を悩ませなくちゃいけねーんだよ。
なのに…。
「じゃあ、桜庭と新山2人でお化け屋敷行ってこいよ。俺、雨宮とあれ乗ってくるから。半になったらまたこっちに集合な」
口は勝手にそう吐いていて。
「え、ちょ、赤羽…勝手に」
「じゃ。また後で」
俺はあわあわとする2人を無視して、ぼーっとしていた雨宮の腕を掴まえて、雨宮が見ていた方に向かって早歩きで歩いた。