一匹少女が落ちるまで
「桜庭だって新山だって同じ気持ちだと思う。雨宮のおかげで少しずつ変われてる」
「それは…それは違います」
俯いた雨宮がそう話し出す。
「赤羽くんの勉強見たのは理央だし、新山さんを班に入れたのも理央で…私は何も…」
「それ本気で言ってんの?」
俺がそう言うと、雨宮はわからないと言う顔をしながら首を傾げてこちらを見た。
「そもそも雨宮が桜庭を変えてんじゃん。俺、あいつのこと嫌いだったけど、今の桜庭は嫌いじゃないんだぜ」
お前のことが好きだから、変われてるんだ。
そんなことを言いたいけど、それは、雨宮自身が自分で気付かないといけないこと。
だから、俺の口からはこれ以上言ってはいけない。
「私が…理央を?」
「あぁ」
「……それは…逆だと思います」
「え?」
─────プシューーー
「お忘れ物のないように、足元に注意してから降りてくださーい。ご乗車ありがとうございました」
雨宮に聞き返した時、ちょうど列車が止まって、運転手の声がそう言った。