一匹少女が落ちるまで
【side 理央】
「桜庭くん、ありがとうね」
「え?」
お化け屋敷の列に並んで順番を待っていると、隣の新山が突然お礼を言ってきた。
「雨宮さんと、友達になれたの」
新山のその発言を聞いて、ほんの少し寂しいなんて思っているのは、誰にも言えない。
友達になっただけなのに、紫月を新山にとられちゃうんじゃないかなんて心配しているんだから。
「俺は…なんにも」
「ううん。桜庭くんには特にたくさんありがとうだよ。おんなじ班にしてもらって、雨宮さんと同じストラップ買ってくれて…あのストラップのおかげで、雨宮さんにもっと近づいてみようって思えたから」
そう少し下を見ながら言う新山は、本当に嬉しそうで、嫉妬したのが申し訳なくなる。