一匹少女が落ちるまで
あり得ない。
山岡が知っているなんてあり得ない。
きっと冗談のつもりでそう言ったんだろう。
でも、あいつのあの目。
どう見ても、冗談で言っている目じゃなかった。
「……桜庭くん?大丈夫?」
隣の新山に声をかけられて、俺はハッと我にかえる。
「あぁ…うん」
そう返事をしたけど、パニック寸前だ。
「入るね?」
頭の中は山岡のあの発言でいっぱいだったけど、俺はなんとか新山の言葉にうなづいて、足を歩かせた。