一匹少女が落ちるまで
「…なんか久しぶりな気がします」
「…何が?」
「理央と話すの」
「あぁ…」
俺は、にやけそうになる口元をキュッと締める。
「俺も、久しぶりな気がする。紫月と話すの」
きっとそんなことないのに。
俺たちは、今日だって話をした。
だけど…。
お互いきっと、おんなじ感覚だ。
「初めは…理央と2人だったから、図書室で」
「うん。そうだね。紫月に死ねって言われた」
「だからあれは…っ!」
意外にも、紫月がいつもより大きめの声でそう言うので、それがまたおかしくて愛おしい。
「うん。わかってる」
俺はそう言って、両手で紫月の頬を包んだ。