一匹少女が落ちるまで
「紫月…」
「2回目ですよ、呼ぶの。なんですか?」
何度呼んでも足りないんだよ。
「ちょっとジッとしてて」
「ずっとしてますよ」
「うん。そうだな」
時々、宴会場にいるみんなの声がかすかに聞こえて、それが一層、今俺たちは2人きりだって言うのを実感させる。
ドキドキドキドキと速く鳴る俺の心臓の音。
そんな音もどうでもよくなってしまうくらい、俺は今、紫月でいっぱいで。
紫月に会いたかった。
紫月と話したかった。
赤羽のこと
新山のこと
城ヶ崎のこと
山岡のこと
1人じゃ不安で。
俺はやっぱり、君の力が必要で。
俺は、自分の顔をゆっくりと、確実に、紫月の顔へと近づけていく。
『ジッとしていて』
俺の自分勝手なその言葉に従順な紫月。
バカ。
ほら、また好きだって思うじゃん。
思いを止められなくて。
もっと触れたくて。