一匹少女が落ちるまで
「新山さん、喜んでたよ。紫月とお友達になれたって」
「はい。あ…赤羽くんも言ってました。今の理央は嫌いじゃないって」
「そう。紫月は?」
「…え?」
「なんでもねー」
理央は、そう言って私の鼻を軽くつまんだ。
どうしてだろう。
嫌だったはずなのに。
鬱陶しいはずだったのに。
今この時間を「嬉しい」と思っている。
さっき嘘をついたのは。
本当の気持ちがバレたくなかったから。
逃げる隙がなかったんじゃない。
逃げなかったんだ。
どうなるのか、わかっていたのに。
最近、特に、修学旅行が始まってから
おかしい。
確実に、理央が原因なのはわかっている。
理央が私を、変えている。