一匹少女が落ちるまで
「…桜庭くんって…優しいよね。格好いいし…」
理央の名前が新山さんの口から出てきて、胸が少しチクッとした。
「あ、は、はい」
「雨宮さんって桜庭くんのことどう思ってるのかなって」
「どう?」
「うん。その…男の子として好きかどうか」
──っ!!
そう言われて、私は、さっきの理央とのキスを思い出してしまう。
なんで。
なんで。
なんであんなもの思い出したりなんか…。
「どう…なのかな?」
新山さんが不安そうにしているのがすごく伝わってくる。
「…別に…なんとも思ってないですよ」
まただ。
嘘をついた。
1日で2回もついてしまった。
人生でついた初めての嘘は。
全部理央に関してのことだ。