一匹少女が落ちるまで
「新山さん、そろそろ図書室閉まるから帰ろっか」
同じデスクで勉強をしていた新山にそう声をかける。
「あ、うんっ」
「送ってく」
「ごめんなさい、毎回」
「いいよ。女子は送ってもらうのが当たり前な気持ちでいた方がいいよ」
「そういうところだよ。桜庭くんのモテちゃうところ」
筆記用具を片付けながら、そういう新山。
「あー…だよね。気をつける。また赤羽に怒られるわ」
「うん」
いい人桜庭くんと完全におさらばするのはまだまだ時間がかかりそうで。
でも…。
「でも今のは、本当に新山さんのこと心配してるから言ったよ」
紫月と友達になった新山。
大事にしたいと思うのは、俺だって、彼女を班のメンバー以上の『友達』だと思っているから。