一匹少女が落ちるまで
「紫月はさ、好きなんだと思うよ。理央くんのこと」
「え?」
「好きだから、気になっちゃうの。話せなくなっちゃうの」
「でも…私、園子とはちゃんと話せてるよ」
「うっ…いや、あのね、紫月の理央くんに対しての好きは、友達としてじゃなくて、男の子として」
「…男の子?」
「そう」
「…よくわからない」
「えっと…例えば…」
そう言って斜め上を向いて顎に人差し指を置く園子。
「会ったばかりなのに会いたいって思って、話したいって思って、触れたいって思うの」
───っ?!
それには…。
心当たりがあった。
3泊4日。いつもより長い時間、理央と過ごしたはずなのに、話し足りないと思っている自分がいた。
「それから、手を繋ぎたい、抱きしめたい、チューしたいって思うの」
「………っ?!」
「えっ、ちょ、紫月?どうした?耳、真っ赤だよ」
髪の毛をかけたせいでよく見えるようになった私の右耳を見て、園子が驚いた顔する。